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episode:05 世継

 夜宵の提案で、二手に分かれて行動することにしたのあ達。あのフロアには簡単に入れる部屋はない、と言う秀の言葉通り​──勿論、夜宵の目で事実確認済みではあるが​──のあの持っていた鍵を使用して、どうやら地下3階であるらしい当初のフロアに辿り着いた。またしてものあと秀、という原点のような組み合わせになったのは、お互いの信頼感や動きやすさ、はたまた秀の監視……などといった合理的な理由ではなく、のあの思い付きにより単純にグーとパーで分かれただけであった。夜宵はといえば、手錠がかけられた状態で一人になったにも関わらず、露骨に安心した様子で笑顔で二人を送り出した。廊下を、のあと秀は淡々と歩いていた。とはいえ特に気まずさからくる静けさなどでは無く、むしろ秀はといえば相変わらずうるさかったので、見つかるから、とのあが黙らせた訳だが。
 いくつか鍵のかかった部屋を素通りして、簡素な両開きの扉を開けた。その部屋は、壁や床こそ白を基調としたものではあるが、一見してカラフルな印象を受ける部屋だった。白色の机には鮮やかな色の花瓶や、読み途中のまま放置したのか開いたままの雑誌が置かれていた。壁際の小さな本棚には、堅苦しい書籍以外にも娯楽小説や漫画なんかまで多彩に用意されていた。その隣のマガジンラックには、色とりどりの雑誌が新しいものから少し古いものまで置かれている。青々とした観葉植物は水を貰ったばかりか、葉の上の水滴が蛍光灯の光を反射して輝いていた。この部屋は、きっと軽い休憩用の一室になっているのであろう。飲み物や、お菓子の自動販売機も設置されていた。

「水……ねー水飲みたくない? 買わない? 秀」
「えぇー? んー待ってー、おさいふー……」
「えっ待ってごめん冗談……」
「いいよー、百円くらい。お水飲まなきゃ死んじゃうからねえ」

 話しながらあらゆるポケットを漁った秀が、小さな黒色の財布から濃紫のカードを取り出して、自販機に読み込ませた。自販機の小さな画面に何か表示された気がしたが、それは秀の袖でのあからは見えなかった。秀が百円玉を滑り込ませボタンを押すと、ピッ、と機械音の後に、ガコン、と音を立てて水のペットボトルが落ちてきた。はい、と自然に秀はそれをのあに手渡す。

「あ、ありがとう……秀も飲む?」
「手え繋ぐのはちょっと躊躇ったのに? のあちゃんの距離感どーなってんのー……?」
「それあんたに言われたくなかった」
 
 秀にもらった水を飲みながら、開かれたままの雑誌を、何気なく、パラ、とめくった。秀は特に興味を惹かれなかったのか、ウロウロと本棚を眺めたと思えば、置きっぱなしのお菓子を勝手に漁っては食べる、を繰り返していた。

『世の中に溢れる数字にも、実は様々な意味が存在する事を、皆様はご存知でしょうか? ここでは、普段何気なく目にする数字が持つ、奥深い意味についてご紹介!』

 パッと目に入ったその文言に、特に興味を惹かれたわけではないが何となく本文へと目を滑らせた。それはまるで穴埋めのような、おまけのようなコーナーで、小さなゴシック体が、特に目立つ訳でもなく配置されていた。
 
『皆様も知る有名どころで言えば、使徒の数“12”であったり、完全を表す“7”などかもしれません。しかしこの他にも、例えば“40”。ノアの洪水は、なんと40日間も続いたと言います。また、彼の救世主様の断食期間も40日だったとか。この事から試練、苦難を表す数字として、40が用いられることも。皆様もぜひ一度、ご自身の好きな数字の持つ意味を調べてみてください。案外面白い意味が隠れているかもしれませんよ!』

「……。苦難だの悪魔だのとか言われたら、それはそれで知らない方が良かったってなりそうだけど」
「あははっ、確かにねえ」

 ぱたんとその雑誌を閉じた。ふと、雑誌の下に落ちていたUSBメモリが目に付いた。のあはそれを拾ってポケットの中に押し込むと、お菓子を食べ、鼻歌を歌いながら絵本コーナーに落ち着いている秀を呼び戻してその部屋を後にした。
 休憩室を出てすぐ、正面にある扉に手をかけた。その扉も、鍵はかかっていなかった。そこはここに来る前のフロアで見た警備職員室と同じ作りで、同様に引き出しの中には拳銃が収められていた。

「……、これは……」

 拳銃の下に、小さな紙切れが入っていた。少しぐちゃぐちゃにシワの入ったその紙には、掠れた油性ペンで文章が殴り書かれていた。

「此処がこそ新たなるスタート地点、我らが目指すは、完全なる世界……」

 『耐え忍べ、今は試練の時』。この紙を書いた人は随分極限状態だったのだろうか。紙には、そう記されていた。

「……はぁ。行こ、秀」

 のあは小さなその紙をポケットに突っ込んで、秀の方を向いた。秀はといえば、ウキウキとした様子で隣の棚に置かれていたお菓子の袋に手を伸ばしている最中だった。
 
「えー!? もう行くのー? 僕このチョコデザートに取っといてたのにー……」
「はぁ?? 何言ってんの、ってか持ってきた訳!? 食べ過ぎじゃない!? ほら、早く。……神咲さん、帰ってきたらまずいんでしょ」

 のあがそう急かすと、秀は少し名残惜しそうに「はぁーい」と未開封のチョコレートの袋を​──開けて、中からいくつか拝借してから​──休憩室に戻しに行った。
 部屋を出てすぐ近くの壁には、『休憩室 掃除当番表』と書かれた張り紙があった。それによれば、どうやら今日は西園寺 真理(さいおんじ まり)という人が当番らしい。軽く流し見て、なにか書類らしきものが入ったダンボールがいくつか適当に置かれている廊下を数歩歩き、すぐ近くの部屋の扉の前に立つ。その扉はロックがかかっていて、文字こそ掠れて見えないがどうやら濃紫か、黒地に赤のラインが入ったカードでしか開けることができないようだった。

「ここあけてよ、秀」
「無理だよー、僕じゃ権限足りないもん」
「え? ……あんた、水買う時出してたカードこの色だったじゃん。違ったっけ?」
「……えー? ああ、ほんとだ。この部屋じゃなかったっけー?? 勘違いだったかも、今開けるね」
「……」

 そう言って、秀は先程のカードをかざした。ピ、と音がして、扉が開く。パソコン等の電子機器や、重要そうなファイルが幾つも置かれている部屋だった。そんな中でも、のあにとって一際輝いて見えるものが、そこにはあった。

「充電器!! 充電器ある、神!?」
「一番に食いつくとこそこなんだ」

 だってもう一桁だったんだもん、とのあがそのケーブルをスマホに挿す。響く充電音。今にも切れそうな真っ赤な電池表記に、充電中のマークが表示された。

「ラッキー、よかったぁ。しばらくさしとこ……そういえば、さっき拾ったUSBここで見れるかな」

 電源ボタンを押せば、小さく起動音を発してそのモニターに光が点った。先程拾ったUSBを挿し込む。キャスター付きの椅子を転がして来た秀が、のあの背後から画面を覗き込んだ。読み込まれたデータには、『天使について』と題名がつけられていた。ファイルを開く。最初に目に付いたのは、『世継』と付けられた名簿のようなファイルだった。

「せ……よ、つぐ……よつぎ? か? よつぎ、どっかで……」
「瀬名くんでしょ。よつぎせな。多分何らかの関係はあるはずだよ、僕も詳しくは知らないけどねえ」

 と、その言葉の通り、ずらりと並んだ名簿の中には確かに『世継 瀬名』の文字が存在していた。興味本位で、その名前をダブルクリックする。そこには、彼のプロフィールのような情報がずらりと並んでいた。

「うわすごい……見ちゃいけないもの見てる感じする」
「じゃあ見ないであげなよ」
「2007年生まれ!? 瀬名って7歳なの!?」
「あの子7歳なのー?」

 興味の向くものに対して、自制心が弱すぎる二人だった。2007年4月30日。なんてことはない日付だが、しかし彼が本当にたった7歳という事実は、容姿自体にそれほど差異が無いとはいえのあにとってかなりの衝撃を与えた​​。のあの言葉に秀も身を乗り出して画面を凝視し、彼の​​──脱出においてなんら必要ないであろう​​──プロフィールの閲覧に夢中になっていた。そうこうしていると、下の方に小さく『旧姓、及び関係者一覧』と書かれた傍線の引かれた文章を発見した。既に好奇心に惨敗しているのあの脳内辞書に、プライバシーなんて言葉はなかった。それをダブルクリックで展開する。そこには、『田代(たしろ) 瀬名』の名があった。

「田代 祐希(ゆき)、母。田代 啓(けい)、父……なんだ、瀬名にも両親いるんだ。……でも、この天使実験を良しとした、ってことなのかな」

 のあは独り言を言いながらそのファイルを閉じて、今度は『世継の名について』と書かれたものを開いた。

「無垢なる彼らは世を継ぐ者、楽園へと導き給う純白の天使。不純なる黒き悪魔を、救済の煉獄へ誘い給う救済者……」
「宗教、って感じだね」
「……でも人体実験でしょ。カルト宗教じゃん、こんなの」
「……。そうかな?」

 ​──ガシャン!!と、扉の外から何か大きな音がした。秀が振り向いて、「ちょっと様子見てくるね」と席を立った。ヴヴ、と、どこにいっても相変わらず時折弱々しい光を見せる蛍光灯が点滅した。どの部屋にも置いてあるのか、観葉植物が伸ばす枝はとうに植木鉢の大きさを超えている。葉の上の水滴が、地面に小さな水溜まりを作っていた。USBを抜いて、パソコンを閉じた。
 天使実験。流し見にはなるが、それでも恐らく最高年齢は14歳程度。理由は分からないが、否定や抵抗の出来ないであろう幼い子供ばかりを集めて実験しているらしいことは、明白だった。
 机の上に、小さな手記が置いてある。『天使候補の子供たちは、既に天使となられたミア様を含め丁度8名だ。天使達の楽園、その始まりを示す彼らに相応しい数だと、常々思う。素晴らしい』​──チラリと目を通しただけでも、そんなような賞賛ばかりで、のあにとってはこの組織のイカれた倫理観を確信付けるものにしかならなかった。

「……ミアちゃんも、被験者なんだよね」

 小さくのあが呟いた。「のあちゃーん、特になんもなさそーだったよ」と、秀の間延びした声が響く。

「だからってそんな大声で叫ばないでよ、危なっかしいな」
「え? あ、そっか。ごめんなさい」

 秀が、今更慌てて口元を覆う。扉をくぐって、小さな部屋を後に、しようとして、のあが直前で立ち止まった。

「……秀。いっこいい?」
「んー? なぁに?」
「あんた、ここの信者でしょ?」

 のあの問いに、秀は穏やかな笑顔で振り向いて、不思議そうに「そうだけど」と首を傾げた。

「ここに住んでたら、だいたいヴァルミナ教の信者だと思うよ。のあちゃんもでしょ? それに、僕関係者だしね。なんで?」
「このままいくと、私達はきっとこの場所のことを、信仰の在り方を、否定することになる」

 のあの言葉に、秀は続く言葉を待つように、珍しく静かに、沈黙だけを返した。
 
「信じてたいなら、否定したくないなら、たぶん、これ以上一緒にいない方がいいよ」

 秀の目線が、何かを考えるように、一瞬泳いだ。小さく口を開いて、また噤んで、そしてほんの少しの沈黙の後に、「ごめんね」と笑ってみせた。

「覚悟はしてた、つもりだったんだけど、……できてなかったみたい。ごめんね、僕嘘ついた。大学なんて行ってない。のあちゃんのこと柊さんから聞いてて、外にある大学のこと知らなかったから同じところ言ったんだ」
「それは、この組織の人間って知ったら、私があんたのこと否定すると思ったから?」
「うん。ごめんなさい、嘘ばっかりついて、信用出来ないよね」
「そりゃ、多少はね。あんたは柊様の言う通りに私を殺したいの? それとも、私に言った通りここから逃げたいの? 質問攻めで申し訳ないけど、そもそも出口知らない訳?」

 そう淡々としたのあの問いに、秀はまた目を逸らして、自分の腕を握った。のあの目前、蛍光灯がブツンと切れた。
 
「最初は、言われた通りにしようと思ってたよ。でも今は、のあちゃんに言ってたのがほんと。一生この施設の中なんて嫌だ、出口なんて教えてもらってない……」
「最初っていつまで? ボイラー室閉じ込めた時? それとも“ゴミ捨て場”?」
「ボイラー室。ゴミ捨て場閉じ込めたのは、あの悪魔処理するとこ見られたらバレると思った、から。あれが計画より先に抜け出したのは気付いてて、処理だけ、どうしたらのあちゃんにバレないかなって……でも、ほんとに、ちゃんと迎えに行く予定だったよ」

 秀の言葉に、のあはただ「ふーん」と返した。しばらく何か考えるように、ただ地面を見つめていた。その沈黙が数秒間続いたあとで、のあが秀の目を見て、口を開いた。
 
「もっと、ちゃんとあんたのこと教えてくれるなら、信じてあげる」
「……。……広瀬、秀です。職業は、天使実験の副責任者」

 意を決したように、秀がそう言った。生まれた時からここにいる。義務教育すらも受けたことがなく、知識はこの教会で教えてもらったと、そう語った。

「あんたは、天使実験は受けなかったんだ?」
「うん。僕には適正がなかった、って。そう言ってた。失敗しちゃう時はあるけど……適正検査して、一定以上の数値じゃない限り実験はしてないよ」
「副責任者の癖に、B4の扉開けられないの?」
「あそこは、副、の僕じゃほんとに無理だよ。ほんとのほんとに、トップの人達しか開けれない」
「……なんにせよ、殺人罪だよ。外出たからって、罪が無くなる訳じゃない。あんた自首すんの?」

 その質問をしてから、答えが途切れた。情がなかったかな、と、思った。一生施設の中は嫌だと伝えた彼に、出てすぐに死ねと言っているようなものなのではないか、とほんの少しだけ思ってしまった。罪が捌かれるべきなのは当然としても、のあからしたら彼が実際に人を手にかけ、実験体にしている所を目撃した訳ではなかったのも大きな理由なのかもしれない。今となってはどこまでが本当なのかも分からないが、しかし事実として腕に切り傷を負ってまでのあを庇い、迷うことも無く飲料を買い与え、人並みに怯え、かと思えば楽しそうに笑ってみせる、そんな彼の印象の方が、まだ強く残っていたからかもしれなかった。しかし、その言葉に返ってきたのは、あまりに、予想外の言葉だった。秀は、しばらく考えた後に首を傾げた。
 
「じしゅ? じしゅってなに?」
「……は? 冗談でしょ?」
「えっ、えっと、か、神様に言うってこと? でも僕そんな言葉聞いたことない、わかんないごめんなさい、どうしたらいい……?」

 訝しげなのあの表情に、慌てたように秀が言葉を続けた。それは嘘をついている、と言える様子ではなくて、きっと本心からそう言っているのだろう。本心から、“自首”という言葉が、分からないと。その言葉に、のあは絶句した。それしか無かった、彼の世界は、のあとは違うのだと痛感した。

「……、分かった。とりあえず、あんたの事は信用する」
「! ほ、ほんと?」
「その代わり、外に行ったら、私たちの世界のことを覚えて。あんたの行き着く先がどれだけ嫌だって思ったとしても、あんたがしてきた事はそれに値することだって自覚して。……それでいつか、遠い未来に向こうで会えたらさ、今度は一緒にゲームでもしよ」

 のあの言葉に、意味が分かっているのかいないのか、秀は無邪気な笑顔で嬉しそうに「うん」と返した。

「ねえ、僕一個やってみたかったことあるんだ。いい?」
「なに?」

 すっ、と秀がのあの方に小指を差し出す。意図を察したのあが、その小指に自身の小指を絡めた。

「ゆびきり、げんまん、嘘ついたら針千本のーます」
「指切った!」

 2人の声が交わって、絡んで繋がった小指同士が切れる。秀が、満足気に「へへ」と笑った。
 
「約束。これさ、お父さんに昔教えてもらったんだよね。あの時、初めて機嫌よくてさ」
「……初めて?」
「えっ? あっ、いや、ごめん。なんでもない……あっ! あれ! 瀬名くんの言ってたやつじゃない?」

 会話は、秀のその発見によって途切れてしまった。そしてのあも、踏み込むのは流石に無粋な話題だと察したのか、それ以上深く追求することはなかった。
 のあの背後、ずっと奥の机の上にひっそりと置かれた臙脂色の羽織と、そこに一緒に置かれたのあより少し小さい程度の杖。瀬名が言うように赤色の、ほんの少し濁った瞳のような模様の宝玉が埋め込まれていた。

「良かった、見落とすとこだった……あとは牢屋の鍵だけか」
「荷物、先に渡しちゃう? 僕届けてくるよ、階段降りてすぐだし。急いで戻ってくる、待ってて」

 そう言うと、秀は荷物を持って小走りで部屋を出た。秀の姿が見えなくなるまで視線で追って、のあが手元に視線を戻した。スマホのバッテリーは、まだ半分にも到達しない。

「藍葉!!」
「うわぁ!?」

 直後、息を切らした夜宵が大きな声でのあを呼んだ。その声に驚いたのあが手に持ったスマホを落として、鈍い音が響く。そんなことはお構い無しに、夜宵が珍しく慌てた様子で捲し立てた。

「広瀬は!? 広瀬秀! まさか一人にしたの!?」
「な、なに、今瀬名に荷物届けてもらって……」
「馬鹿! 人を簡単に信じすぎだと私は言ったはずだよ、よく聞いて藍葉。この教会のどこの名簿にも、過去から今まで全部探したって広瀬秀なんて名前載ってない!!」

 ​直後、赤色の電灯が点滅して、辺りにうるさいほどのサイレンが響き渡った。慌てて外に出る。魔力濃度調整器が、エラー信号を吐いている。のあが、頭痛を抑えるかのように、頭に手を当てて蹲った。夜宵が、軽い様子で、手に付けられていた手錠を噛みちぎって見せた。

「……まずいな、魔力の濃度が濃すぎる。この階は人間にとって危険だよ、藍葉。一度移動しよう、さっき上に続く階段を見つけたんだ」
「でも、瀬名が」
「今一番危険なのは君だよ。彼は君を案内したあとで私が連れてくる」

 のあの手を引いて走りながら、夜宵が言った。視界の端に、何かが写った。それは人間のようで、高校の制服らしき衣服を纏った、茶色の髪をした男性の姿だった。このサイレンにも動じずに、彼は二人の方を見て、驚いた顔をした。

「……なんで出てきてんの」

 小さくそう呟いた彼は、休憩室の方に駆けていって、そのまま扉の中に消えた。

「……ゆう、くん」

 その言葉を発したのを最後に、のあはギリギリで保っていた意識を手放した。

@2025 ヰ嚢

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